顔面神経麻痺になってから、
- ふわふわする
- ぐるぐる回る感じがする
- 横になると余計に気持ち悪い
といった「めまい」を訴える方がいらっしゃいます。
特にラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹ウイルスによる顔面神経麻痺)では、
- 突発性難聴
- 耳鳴り
- 耳の閉塞感
- 聴覚過敏
などの耳の症状とともに、めまいを感じる方も少なくありません。
入院や投薬など、病院での治療を受けても「顔の麻痺は落ち着いてきたのに、めまいだけが残ってつらい」という声もあります。
なぜ顔面神経麻痺でめまいが出ることがあるのでしょうか?
顔面神経(第7脳神経)と、めまいに関わる前庭神経を含む内耳神経(第8脳神経)は、脳の橋より出ています。さらにこの2つの神経は、かなり密に隣り合わせで走行し、「内耳道」という細いトンネルの中を走行しています。そのため、
- ウイルスによる炎症
- むくみ(浮腫)
- 血流の変化
などが起こると、一つの病変が 両方の神経に影響しやすい と考えられています。特にラムゼイ・ハント症候群では、耳まわりの神経や内耳がダメージを受けやすく、その結果として「顔の麻痺+耳の症状+めまい」が同時に現れることがあります。
首の筋肉と耳のまわりの状態もポイントに
当治療院院長の長年の臨床経験上、顔面神経麻痺とめまいを抱える方は、
- 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)( 耳のうしろから鎖骨に向かって走行している首の筋肉)
- 耳のまわり(乳様突起付近)
- 側頭部・頭皮
が、かたくこわばっていたり、むくんでいたりすることが少なくありません。
胸鎖乳突筋は、耳の後ろまで走行する筋肉であり、その緊張が続くと、首まわりの血流やリンパの流れ
に影響している可能性も考えられます。そのため、顔面神経麻痺にめまいを伴う方では、首(特に胸鎖乳突筋)のこりや、耳の後ろの硬さ、耳のまわりや頭皮の張り・むくみを丁寧に触れて確認し、負担がかかっている部分をやわらげていくことが大切だと考えています。
鍼灸ではどのようなアプローチをするのか(一般的な一例)
ここからは、鍼灸でよく用いられる考え方・手法の一例です。実際の施術内容は、お一人おひとりの状態や体質によって異なります。
- 首・耳のまわりの筋肉の緊張をゆるめる
- 胸鎖乳突筋
- 耳の後ろ(完骨のツボ周辺)
- 側頭部や頭皮のこわばり
などを、浅い鍼や軽い刺激でゆるめていき、 首から頭にかけての血流・巡りを整えることを目指します。
- 胸鎖乳突筋
東洋医学的なめまいへのアプローチ(奇経治療・帯脈など)
①東洋医学では、体内の「水分(すい)」の偏りで、めまいを引き起こす場合があると考えられています。さらに気血の不足によるめまいや、ストレスによる気の巡りの乱れなど、いくつかのタイプがあると考えます。
② 奇経治療のひとつである帯脈は、古くからめまいに用いられてきた経脈として伝えられており、 こうした経脈の流れを整えることを目的とした施術が行われることがあります。
③体質や状態に合わせた全身調整
例えば体がむくんでいて、ふわふわしためまいがある場合は、水分代謝を整える経穴である、三陰交、豊隆、水分などのツボを用います。さらに、脾・腎に関係するツボなどを用いて、水分代謝を整えます。さらに、ストレスが強い場合は、頭頂部の百会や足の太衝、太陽のツボなどを用いて、リラックスを促します。食欲不振・疲労感が強く、ふらふらする場合は、消化器の働きをサ ポートするツボ、例えば足三里や合谷など気血を補うとされるツボを選びます。
めまいの東洋医学的な原因は体質によって異なります。当治療院では、お客様の体質や身体の状態に合わせて施術内容を組み立てていきます。
以上はあくまでも「東洋医学の考え方に基づくアプローチ」であり、特定の病名に対する効果を保証するものではありませんが、首や耳まわりのこわばり、全身の緊張が和らぐことで、「めまいが楽になった」と感じられる方もいらっしゃいます(感じ方には個人差があります)。
めまいがあるときに気をつけたいこと
めまいを感じるときは、次の点にご注意ください。
- 無理に外出したり、一人で遠くに出かけない
- 立ちくらみが強いときは、あわてて立ち上がらず、いったん座る・横になる
- 転倒しやすい環境(段差・暗い場所など)をできるだけ避ける
また、以下のような症状がある場合は、
すぐに医療機関(救急を含む)を受診してください。
- 突然の激しいめまいと頭痛
- ろれつが回らない・手足のしびれや力が入りにくい
- 意識がもうろうとする
- 顔面神経麻痺が急に悪化した など
めまいは、耳だけでなく脳や循環器など、さまざまな原因で起こる可能性があります。まずは医師の診察・検査で原因を確認することが最優先です。
おわりに
顔面神経麻痺とめまいは、神経の走行が近いことや、耳まわりのトラブルなどが重なり、同時に現れることがあります。
- 病院での治療を受けてもめまいが残っている方
- 首や耳のまわりのこり・張りが気になる方
- ストレスや疲労も重なって、ふらつきやすいと感じる方
医療機関での診断・治療を受けたうえで、鍼灸による体調管理や全身調整を取り入れることで、
日々のつらさが少しでも和らぐことを目指します。ご自身だけで抱え込まず、まずは医師や専門家にご相談のうえ、安心できる形でケアの選択肢を広げていただければと思います。
※本記事は医学的な一般情報です。診断や治療は必ず医師・医療機関の判断のもとで行われます。
※効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同じ変化がみられるわけではありません。







