顔面神経麻痺が重症になると、患側の眉や上まぶたが下がり、目が開きにくくなります。症状が重篤になると視界が狭くなって生活に支障をきたす場合があります。「顔面神経麻痺なのに、なぜ眼瞼まで下がってしまうのだろう」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。

今回は、顔面神経麻痺に伴う眼瞼下垂の症状と鍼灸治療について解説します。
上眼瞼を持ち上げる代表的な筋肉は「上眼瞼挙筋」です。上眼瞼挙筋には、上まぶたを引き上げて目を開く作用があります。しかし、この上眼瞼挙筋を支配している神経は顔面神経ではなく、動眼神経です。顔面神経は主に、前頭筋、眼輪筋、頬筋、口輪筋などの表情筋を支配しています。そのため、一般的な末梢性顔面神経麻痺においては、顔面神経の麻痺そのものによって上眼瞼挙筋が麻痺し、眼瞼下垂が起こるわけではないと考えられます。
顔面神経麻痺では「前頭筋」が重要

上まぶたを持ち上げる「上眼瞼挙筋」
そこで注目したいのが、額にある前頭筋です。前頭筋は表情筋の一つで、顔面神経の支配を受けています。前頭筋には眉を上方へ引き上げる働きがあり、額にしわを寄せる際にも使われます。しかし、顔面神経麻痺によって前頭筋の働きが低下すると、患側の眉を持ち上げることが難しくなり、額にしわを寄せることもできなくなります。その結果、眉が下方へ下がり、眉周囲や上眼瞼の皮膚も下方へ移動します。これによって上まぶたが押し下げられ、眼瞼下垂のように見える状態が現れることがあります。つまり、顔面神経麻痺でみられる「まぶたが下がったように見える症状」の一部には、上眼瞼挙筋そのものではなく、前頭筋の麻痺に伴う眉毛下垂が関係している可能性があります。
顔面神経麻痺の眼瞼下垂に対する鍼灸治療
東京・池袋の鍼灸エル治療院では、顔面神経麻痺によって眉や上眼瞼が下がっている場合、前頭筋の状態を確認しながら鍼灸治療を行っています。ただし、単純に前頭筋へ鍼を打つだけでは、十分な変化が得られない症例もあります。当院では、院長が長年にわたり顔面神経麻痺の鍼灸治療を行ってきた臨床経験をもとに考案した独自の刺鍼方法を用いて、前頭筋や眉周囲の状態に応じた施術を行っています。これまでの臨床では、顔面神経麻痺に伴って眉や上眼瞼が下がっていた方に対し、鍼灸治療を継続することで、その状態に改善がみられた症例を多数経験しています。顔面神経麻痺では、「目が閉じにくい」という症状だけではなく、眉や上眼瞼の位置にも変化が現れることがあります。そのため、顔面神経と表情筋の解剖学的な関係を理解したうえで、患者様それぞれの症状に応じて鍼灸治療を組み立てることが重要であると考えています。







