顔面神経麻痺では、目が閉じにくい、口角が上がらないといった症状だけでなく、「下唇を下に動かしにくい」「笑ったときに口元の左右差が目立つ」といった症状がみられることがあります。
下唇の動きに関係する代表的な筋肉の一つが下唇下制筋です。

下唇下制筋は、その名前のとおり下唇を下方へ引く働きをしています。顔面神経麻痺によってこの筋肉の働きが低下すると、上記のイラストのように、麻痺している側の下唇を十分に下へ動かすことが難しくなる場合があります。
そのため、笑ったときや口を動かしたときに左右差が現れたり、「下唇が動かしにくい」「唇のあたりに違和感がある」と感じたりすることがあります。
下唇だけでなく周囲の筋肉も確認します
下唇の動きには、下唇下制筋だけが関係しているわけではありません。
当院では、下唇下制筋・口角下制筋・オトガイ筋など、口元にある筋肉の状態を確認しながら治療を行います。
顔面神経麻痺に対する鍼灸治療というと、口の周囲にある一般的なツボへ鍼をする方法もあります。しかし、下唇の動きがなかなか改善しない場合には、ツボだけではなく、どの筋肉の働きが低下しているのかを解剖学的に考え、目的とする筋肉にアプローチすることが重要だと当院では考えています。
実際に当院でも、一般的な口周囲への刺鍼を続けても下唇の動きに大きな変化がみられなかった患者様を経験しました。
そこで下唇下制筋やその周囲の筋肉をより細かく確認し、それぞれの筋肉の走行や働きを考えながら鍼を行いました。
ただし、単純に筋肉の位置へ鍼をするだけでは、十分な変化がみられないケースもありました。
そこで当院院長が臨床経験をもとに工夫した、筋肉の走行と下唇の動きを考慮した独自の刺鍼方法を用いたところ、治療を重ねる中で、これまで動かしにくかった下唇の動きに変化がみられ、笑ったときの口元の左右差にも改善がみられた症例を経験しています。
顔面神経麻痺では、同じ「口が動かしにくい」という症状でも、低下している筋肉は患者様によって異なります。
そのため当院では、決められたツボだけに鍼をするのではなく、表情筋の動きを一つひとつ確認し、解剖学的な視点から必要な筋肉を見極めて治療することを大切にしています。
※顔面神経麻痺の程度や回復経過には個人差があり、鍼灸治療による変化にも個人差があります。







