顔面神経麻痺を発症すると、口元に左右差が現れることがあります。その中でも、「上唇が片側に引っ張られる」「鼻の下の人中が傾いて見える」といった症状に悩まれる患者様は少なくありません。
特に人中の傾きは、安静にしているときにも目立つことがありますが、笑ったときや会話をするときにはさらに左右差が大きく見える場合があります。
池袋のエル治療院では、長年にわたり顔面神経麻痺に対する鍼灸治療を行ってきました。その臨床経験から、上唇や人中が引っ張られる方向は、発症直後と数か月経過した慢性期とで変化する場合があると考えています。

顔面神経麻痺の発症初期は健側に引っ張られることがある
顔面神経麻痺を発症したばかりの時期には、患側の口唇周囲の表情筋が麻痺し、筋肉の緊張が低下していることがあります。
その一方で、麻痺していない健側の筋肉は通常の緊張を保っています。
そのため、左右の表情筋のバランスが崩れ、相対的に緊張の強い健側方向へ上唇(人中)が引っ張られて見えることがあります。
私は長年、顔面神経麻痺の患者様を施術する中で、このような変化を数多く経験してきました。
そのため、エル治療院では患側だけを見るのではなく、健側を含めて口唇周囲の表情筋の硬さや左右差を確認しながら鍼灸治療を行っています。
数か月経過すると患側に引っ張られることも
ところが、顔面神経麻痺を発症してから3~4か月ほど経過すると、初期とは異なる状態がみられることがあります。
患側の口唇周囲の表情筋に硬さやつっぱりが生じ、次第に患側の筋緊張が強くなることがあります。
すると今度は、上唇や人中が患側方向へ引っ張られるように見えることがあります。
発症初期には健側方向へ引っ張られていたものが、時間の経過とともに患側方向へ変化することがあるのです。
特に笑ったときには、口元の左右差が強く現れ、
「笑うと口元が歪んで見える」
「上唇が片側に引っ張られる」
「人中が斜めになっている」
と感じる患者様もいらっしゃいます。
人中の傾きには左右の筋緊張を確認することが重要
このような症状に対しては、単純に麻痺している側だけに鍼をするのではなく、左右どちらの表情筋の緊張が強いのかを確認することが重要だと考えています。
私自身も以前は、口唇周囲に一般的な方法で刺鍼を行っていました。
しかし、人中や上唇の傾きが強い症例では、それだけでは十分な変化を得ることが難しい場合がありました。
そこで、長年の臨床経験をもとに、口唇周囲の表情筋の状態を確認しながら、刺鍼する位置や方向を工夫する独自の方法を考案しました。
この方法を用いることで、上唇や人中の傾き、笑ったときの口元の左右差が軽減した症例を複数経験しています。
ただし、顔面神経麻痺の程度や発症からの期間、後遺症の状態には個人差があり、すべての患者様に同じような経過が得られるわけではありません。
顔面神経麻痺の鍼灸治療について専門書を出版予定
今回ご紹介した、上唇が片側に引っ張られる症状に対する具体的な刺鍼方法については、現在出版を予定している専門書『顔面神経麻痺の鍼灸治療』の中で詳しく解説する予定です。
本書は鍼灸師や医師などの専門家を対象としており、顔面神経麻痺によって生じるさまざまな表情筋の症状に対し、私自身の長年の臨床経験をもとに施術方法をまとめています。
顔面神経麻痺による上唇や人中の傾きは、患者様にとって外見上の大きな悩みになることがあります。
そのため、発症からどの程度時間が経過しているのか、健側と患側のどちらの筋緊張が強いのかを確認しながら、その時期に合わせた鍼灸治療を組み立てていくことが大切だと考えています。
池袋のエル治療院では、顔面神経麻痺の症状や後遺症について、一人ひとりの状態を確認しながら鍼灸施術を行っています。








